障子の張り替えは、日本の伝統的な家屋メンテナンスの一つであり、少しのコツと準備で初心者でも美しく仕上げることができます。張り替えの過程で部屋が明るくなり、雰囲気も一新されるので、手軽に取り組む価値があります。ここでは、必要な道具と具体的な手順をわかりやすく説明します。
【必要な道具】
- 障子紙
ホームセンターなどで市販されている新しい障子紙を用意しましょう。障子紙には、伝統的な和紙や、破れにくいプラスチック製のもの、デザイン入りのものなどがあります。部屋の雰囲気や使用目的に合わせて選んでください。今回はアイロンや両面テープタイプではなく障子紙を障子糊で張る事を想定しています。 - 障子糊
障子紙を貼り付けるための専用の糊です。ホームセンターや100円ショップで販売しているもので十分ですが、安い糊を使用する場合は乾燥時間を少し長めにとってください。 - カッター
余った障子紙を切り取るために使います。鋭いカッターを使うことで、きれいにカットすることができます。障子を1枚カットするごとに刃を折って新しい部分を使うと作業がスムーズです。カッターを出来る限り寝かせて使うのがコツです。 - 長い定規(または地ベラ)
障子紙をカットする際に、まっすぐに切るためのガイドとして使います。長いものがあると便利です。100円ショップなどで50cmなどの長めの定規が売っています。今後も障子の張替をする方はネット検索で「PC定規」で検索すると、障子をカットする専用の定規を購入することができます。 - 霧吹き
仕上げの際に、障子紙をピンと張らせるために使います。100円ショップなどで販売しているものでも大丈夫ですが、水滴が大きいと枠(框)の部分から水が垂れるて茶色になることがあります。水を細かい霧状に噴射できる霧吹きを用意しましょう。 - ヘラ(またはプラスチック板)
古い糊をこそぎ取る際に使います。専用のヘラがなければ、プラスチックのカードや板などで代用可能です。 - 紙やすり
桟(さん)の表面を整えるために使います。#120~#240くらいの荒さの紙やすりを用意し、木枠や桟を平にかつ表面を荒くして障子紙がしっかりと貼り付くようにします。 - 刷毛(はけ)
障子糊を塗る際に、均一に薄く塗るために使います。刷毛を使うことで、糊がムラなくきれいに塗れます。
【障子張り替えの手順】
- 湿気の多い日に作業を始めるのがおススメ!
障子紙の張り替えは、湿度が高い日が最適です。湿気が多いと障子紙が伸びた状態なので、作業後にシワができにくくなります。また、糊の乾燥がゆっくりになります。乾燥しすぎていると、紙がパリパリで糊の渇きが早くなるため作業が難しくなります。慣れないうちは湿度の高い6月~7月がおススメです。 - 障子をきれいに洗う
古い障子紙を取り除きます。ガラスがついていない障子の場合は、全体を水でしっかり濡らして障子糊を柔らかくします。ガラス付きの場合は、ガラスを外してから作業するか、ガラスを囲む木材をあまり濡らさないように紙の部分だけを濡らすようにします。濡らして数分時間を置くことで、古い糊が柔らかくなり、紙を剥がすのが楽になります。 - 古い糊をヘラでこそげ落とす
障子がしっかり濡れたら、ヘラを使って古い糊をこそげ落とします。木の目に沿って滑らせるようにヘラを動かし、力を入れすぎずに古い糊を丁寧に取り除きます。木の目と逆方向にへらを動かすと木の繊維が剥がれて来るのでその場合は反対方向にへらを動かしましょう。この作業を怠ると、紙やすりで整える作業が大変になり見た目が汚くなるので、根気よく取り組みましょう。 - 再度水洗いし、残った糊を除去する
古い糊を取り除いた後、再度障子枠を水で洗い流します。最後は必ず桟の見える側から水をかけるようにします。ここでしっかりと糊の残りや小さなゴミを洗い落とすことが、最終的な仕上がりに影響します。 - 障子枠を乾燥させる
障子枠をきれいに洗った後は、完全に乾燥させることが重要です。1日ほど陰干しするのが理想ですが、時間がない場合は扇風機を使って数時間で乾かしても大丈夫です。湿気が残っていると、障子紙を張った時に桟のアクが障子紙に移り紙が茶色くなってしまいます。しっかり乾かしてください。 - 桟(さん)を紙やすりで整える
障子を貼る桟の部分を、紙やすりで軽く削ります。これは、表面を平にかつ表面を荒らすことで、新しい障子紙がしっかりとくっつくようにするためです。#120~#240くらいの荒さの紙やすりを使い、優しく木枠の表面を整えます。削りすぎないように、ざらつきがなくなる程度に仕上げれば十分です。 - 紙シャクリ部分も紙やすりで整える
紙シャクリ部分とは、木枠(框)の障子紙を貼るくぼみの部分です。(古い障子などでは紙シャクリが無い場合もあります。)こちらも軽く紙やすりをかけて、表面を滑らかにしておくことで、紙を貼った際に美しい仕上がりが期待できます。 - 薄く糊を塗る
桟と紙シャクリ部分に、障子糊を薄く均一に塗ります。このとき、刷毛を使って刷毛を寝かせ紙シャクリに乗せるように塗るとムラができにくくなります。糊を厚く塗りすぎると、次回の張り替えの際に剥がしにくくなるため、あくまで薄く、全体に行き渡るように塗りましょう。 - 中央の縦桟に障子紙を貼る
障子糊を塗ったら、次に新しい障子紙を障子に乗せます。障子紙を障子に載せる工程はご夫婦が良くけんかをするポイントですが、仲良く作業してください!お勧めの方法は障子紙の片側をマスキングテープで固定し、残りの丸まった障子紙をコロコロと障子の上を転がすようにするのがポイントです。多少しわが寄っていても問題ありません。最後は紙が巻き戻ってしまうので何かおもりを載せておきます。その後、中央の縦桟を手で軽く押して、障子紙を貼り付けます。紙を引っ張りすぎないように注意しながら、中心から上・中心から下へと少しずつ貼っていきます。すべての縦桟でこの作業を行います。ポイントは中心から上・下です。 - 横桟に障子紙を貼る
中央の縦桟に紙を貼り終えたら、次は横桟に貼り付けていきます。中央から外側に向かって順番に上・下の横桟で作業を進めます。このときも紙を”軽く”引っ張りながら、たるみやシワができないように貼り付けていきます。 - シャクリ部分にも障子紙を貼る
シャクリ部分にも障子紙をしっかりと貼り付けます。こちらも紙を軽く引っ張りつつ、たるまないように注意しながら、しっかりと固定します。 - 障子紙をカットする
すべての桟に障子紙を貼り付けたら、余った障子紙をカットします。カッターを使い、定規や地ベラを沿わせてまっすぐに切り取ります。カッターの刃が鈍っていると紙が引きつってしまうため、切れ味を確認しながら作業してください。切る際にはカッターはできる限り寝かせて使うのが切るコツです。 - 糊を乾燥させる
障子紙を貼り付けた後は、糊が完全に乾燥するまで時間を置きます。この段階でしっかりと乾燥させることで、紙が剥がれにくくなり、長持ちします。焦らずに糊がしっかり乾くまで待ちましょう。夏場でも最低30分、冬場では1時間30分程度は霧吹きするのを待ちます。 - 仕上げに霧吹きで紙を張らせる
最後に、障子紙全体に霧吹きで水を吹きかけます。紙が軽く湿って乾燥すると、ピンと張った状態になります。これにより、シワやたるみが取れ、美しい仕上がりになります。ただし、霧吹きを使いすぎると溜まった水滴がアクを発生さて見た目が汚くなりますので、適量を調整しながら吹きかけるようにしましょう。もし1回でピンと張らなければ2回、3回とこの作業を繰り返します。
このように、適切な道具と手順を守れば、障子の張り替え作業は決して難しくありません。
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